韓国の 朴槿恵(パク・クネ)大統領弾劾、罷免
韓国の 朴槿恵(パク・クネ)大統領が韓国憲法裁判所から罷免を認める決定を言い渡された
(朴氏の大統領罷免を決めた憲法裁=10日、ソウル:聯合ニュースより)
憲法裁の決定は宣告と同時に効力が発生するものでし、
職務停止状態の朴大統領は任期を全うできず、大統領職から退くことになった
私は一連のこのニュースずっと見ていて一つ腑に落ちなかったのは
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大統領という国民の選挙によって選ばれた人を
何ら有権者の民意を反映していない裁判所の決定で罷免させてしまうこと
日本のように議院内閣制をとっている国であれば
行政府の長である内閣総理大臣は国会で指名し、
また衆議院の不信任決議によりその職から降ろすことは制度上可能である
この場合、衆議院は有権者から選挙によって選ばれた代表者であるから
内閣総理大臣の不信任には有権者の意思が反映されていることとなる
で、韓国憲法の条文を確認してみた
大韓民国憲法第65条
大韓民国憲法には次のような条文があった
第65条 ①大統領、国務総理、国務委員、行政各部の長、憲法裁判所裁判官、法官、中央選挙管理
委員会委員、監査院長、監査委員その他法律が定めた公務員が、その職務執行に際して、憲
法又は法律に違背したときは、国会は弾劾の訴追を議決することができる。
② 前項の弾劾訴追は、国会在籍議員の3分の1以上の発議がなければならず、その議決は、
国会在籍議員の過半数の賛成がなければならない。ただし、大統領に対する弾劾訴追は、国
会在籍議員の過半数の発議及び国会在籍議員の3分の2以上の賛成がなければならない。
③ 弾劾訴追の議決を受けたきは、弾劾審判があるときまで、その権限行使が停止される。
④ 弾劾決定は、公職から罷免するにとどまる。ただし、これにより民事上又は刑事上の責任
が免除されない。
大統領は国会議員の3分の2以上の賛成で弾劾訴追を受ける
弾劾訴追で、権限行使が停止される
つまり、今日の決定までは、朴大統領はこの権限停止の状態だった
大韓民国憲法第111条
で、大韓民国憲法は、第6章に憲法裁判所の規定がおかれていて第111条には憲法裁判所の役割と構成が示されている
第111条 ① 憲法裁判所は、次の事項を管轄する。
1 法院の提請による法律の違憲性の審判
2 弾劾の審判
3 政党の解散の審判
4 国家機関相互間、国家機関と地方自治団体間又は地方自治団体相互間の権限争議に関する審判
5 法律が定める憲法訴願に関する審判
② 憲法裁判所は、法官の資格を有する9人の裁判官で構成し、裁判官は、大統領が任命する。
③ 前項の裁判官のうち、3人は国会で選出する者を、3人は大法院長が指名する者を任命する。
④ 憲法裁判所の長は、国会の同意を得て、裁判官の中から大統領が任命する。
憲法裁判所の裁判官は大統領が任命することとなっている
ただし、3人を国会が、3人を日本でいうところの最高裁長官が指名したものを選ぶことになっている
第113条には決定の手続き規定がおかれていて
第113条① 憲法裁判所で、法律の違憲決定、弾劾の決定、政党解散の決定、又は憲法訴願に関する認容
決定をするときは、裁判官6人以上の賛成がなければならない。
② 憲法裁判所は、法律に抵触しない範囲内で、審判に関する手続き、内部規律及び事務処理に関する規則を制定することができる。
③ 憲法裁判所の組織、運営その他の必要な事項は、法律で定める。
憲法裁判所の裁判官は、立法行政司法のそれぞれ三権を通して選ばれいる
また、法律の違憲決定や、今回のような弾劾の決定などの重要事項は
9人の裁判官のうちで6人以上が賛成しなければ決定できないように定められており
特定の政治的な思惑などで安易にことが進まないような工夫がなされている
日本にも高度な政治的な法律判断が必要な場合は、
憲法裁判所のような特別な機関がその役割を担うべきではないかという議論もある
世界の憲法裁判所と日本の現状
因みに専門の憲法裁判所はおかれている国としては、
イタリア、オーストリア、韓国、スペイン、タイ、チェコ、ドイツ、ハンガリー、フランス、ポーランド、ベルギー
などがあり憲法裁判所には法律の違憲審査権や大統領の罷免などの
政治的な判断がその役割とされている
アメリカ合衆国は憲法裁判所は設置されず、法律の違憲審査権は通常の裁判所が
具体的な訴訟事件を前提として、その手続きの中で行う。
また、大統領の弾劾は下院が単純過半数の賛成の基づいて訴追し
上院が出席議員の3分の2の多数で弾劾を決定する
ここでは司法の関与する余地はないが、上院の審理で大統領が
弾劾の対象となっている場合に限り連邦最高裁長官が弾劾裁判長となる
ちなみにアメリカ大統領がこの手続きにより弾劾された例はない
日本は、日本国憲法第76条第2項で、特別裁判所の設置を禁じている
日本国憲法第81条では違憲審査の最終的権限を最高裁判所に与えているため、
最高裁判所から独立した憲法裁判所を設けるためには、
上記2条項の憲法改正の必要性が生じる
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